宅建士合格のために!土地の工作物の所有者責任について 台風被害・天災と賠償責任は?
1. 所有者に故意又は過失がなければ賠償責任はない?
土地の工作物の所有者責任は無過失責任です。土地の工作物の所有者の責任は、故意・過失の有無を問わず責任を負う無過失責任とされております。
すなわち、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条)。
もっとも、損害の原因について他にその責任を負う者がいるときは、所有者又は占有者は、その者に対して求償権を行使することができます。
それでは、
2. 土地の工作物の所有者は台風被害の損害賠償責任を負うのでしょうか?
この所有者又は占有者の賠償責任は土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることが前提です。設置又は保存に瑕疵がある場合の規定です。
従いまして、台風で隣家等に被害が発生いたしましても、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵がなければ、その所有者も占有者も民法717条の賠償責任はありません。
なお、ここに瑕疵(欠陥があること)とは、通常備えるべき安全性を欠くことを指します(建物の売買における売主の買主に対する瑕疵担保責任では、瑕疵とは通常有すべき品質・性能を欠くことをいい経年変化による劣化や腐食は瑕疵に当たらないと一般に解釈されておりますから、この点は異なります)。
3. 設置又は保存に瑕疵はなかったのでしょうか?不可抗力でしょうか?
当初の設置の段階では建築基準法の規定に適合していても、鉄柱設置から約40年とか経過しますと、経年劣化により鉄柱の基礎部分のボルトが破断したり、鉄が腐食したりすることが起きているかもしれません。それらは保存に瑕疵があることになると思われます。
点検・維持管理に不備はなかったのでしょうか?
ネット付きの場合は、秒速25mに耐えられる設計のようですが、台風は秒速33m以上とのことですから、台風が近づけばネットを下す必要があるでしょう。巨大台風ならなおさらです。
ネットを下さなかったようですが、下せないようになっていたのなら、設置又は保存上瑕疵があることになるのではないでしょうか。
又、ネットを下さなかった、あるいは基礎のボルトの腐食・破断を放置したのであれば、民法の不法行為責任 (故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う)( 709条)を負うことになると思われます。
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