事務所で契約➜COOLING-OFFで解約できる? その2

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事務所で契約➜COOLING-OFFで解約できる? その2

1. 訪問販売法、特定商取引法は改正されました。

一般の旧訪問販売法(現在の特定商取引法)でも事務所(営業所、店舗)での契約はクーリング・オフの適用外でしたが、いわわるキャッチング・セールスが横行し、巧みに営業所に案内されて(連れて行かれて)契約させられる(売りつけられる)事例が頻発しました(その後アポイントメントセールスも横行)。そこで、旧訪問販売法(平成12年から特定商取引法)は営業所(事務所・店舗)で契約した場合にもクーリング・オフができるように改正されました(特定商取引法212号、91)

2. 宅地建物取引業法は改正されていません。

一方、不動産では通常キャッチング・セールスは行われませんから、宅地建物取引業法(以下業法といいます)では旧訪問販売法(現特定商取引法)のような改正はなされていません。

改正しないまま、改正した法律と同様に事務所等で契約を締結した場合に、クーリング・オフにより契約を解除することができると解釈するのは無理があります。

解約を認めないと、現地のテント張り案内所や喫茶店等で購入の申し込みをさせ、後日上手いことをいって事務所に連れて来られて契約させられるケースが生じるというご意見があります。

3. 理由になっていません。

しかしながらそれは理由になっておりません。なぜならば、最初からうまいことをいって事務所に案内され(連れて来られ)契約すれば(契約させられれば)同じことになるからです。

事務所等以外の場所で申し込みをしないで、最初から事務所で申込み契約を締結した場合に、クーリング・オフにより契約を解除することができると解する人はいません。

特定商取引法において、営業所(事務所)で締結した売買契約を解除することができるのは、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させて売買契約を締結した(締結させられた)特定顧客」の場合に限られております。

業法にはこのような規定はありません。

4. 事務所で真面目に真剣に契約して解約?

どこで申込みをしたのであれ、印鑑等を準備してわざわざ事務所に足を運び、真剣に真面目に契約を締結した場合に、この規定により契約の解除をする(認める)必要性があるのでしょうか? 契約の法的安定性が損なわれ、取引の安全が害されることになりかねません。無条件に解約されるのであれば、取引の次のステップに移行できないでしょう。本当にそれでいいのでしょうか。

事務所で真面目に真剣に契約を締結する段階では、事務所等以外での申込みの瑕疵は補正されていると判断されるのではないでしょうか。補正されない例外を考えるのでしたら、特定商取引法のように法改正をするべきです。㊟宅地建物取引業には特定商取引法は適用がありません。

5. 単純な文理解釈です。

なお、「事務所等において買受の申し込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した」場合を業法がクーリング・オフの規定の適用除外としているのは、事務所等で申込みをしたのですから当然適用外であることを念のため規定したものにすぎません。この規定を根拠に(反対解釈して)「事務所等以外の場所で申込をすれば、後日事務所等で契約を締結しても契約を解除することができる」と解する(そのように文理解釈するのは可能ですが)のは、法律の解釈はいろいろありますが、上述のとおり妥当な解釈とは言えません。

この問題は過去に何回も出題され(最近では平成23年、26年、30)、「後日事務所で契約を締結した場合、買主は売買契約の解除ができる」とする記述は正しいとされてきました(本年も同じだと思います)

6. 法改正が必要です。

しかしながら、そのような解釈・適用をするためには、特定商取引法のように法律(業法)の改正をするべきです。改正しないで改正された法律と同じ解釈をするのは妥当ではありません。

さもなければ、最高裁判所で判例を得るべきです。もしくは、国土交通省が統一見解・解釈を示すべきです。

7. 国家試験等の出題に不適切です。

単純な文理解釈(反対解釈)により、法律(業法)を改正しないまま「事務所等以外の場所で申込みをした場合は、後日事務所で契約を締結してもクーリング・オフの規定により契約の解除ができる」との記述が正しいとする出題は、国家試験等のこの種の試験問題としては不適切であるといわざるを得ません。

8. 契約成立後に申込みの撤回ができる? あり得ません。

なお、以前、事務所等以外の場所で申込みをし、後日事務所で売買契約を締結した場合は、申込みの撤回ができる(それが正しい)との出題がなされたことがありました。 撤回は取消と異なり遡及効がありませんから、契約成立後に申込みの撤回を認めますと、契約成立から契約解除までの間の法律効果(権利義務)が残ってしまいます。そのような法律解釈はあり得ません。

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