遺贈の場合は遺産税がかからない? 契約書を作らないと報酬をもらえない?
100億円の遺産を残して資産家老人が死にました。
長男は非行を理由に廃除を受けております。
[相続廃除]
遺留分を有する推定相続人が、被相続人を虐待し、又は被相続人に対して重大な侮辱を加えたり、その他の著しい非行があったときは、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。
次男がおりまして、遺産の全てを次男に遺贈する旨の父の遺言書を出してきましたが、筆跡鑑定の結果、その遺言書は偽造であることが判明しました。
[相続欠格]
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、相続人となることができません(民法891条5項)。
[代襲相続]
被相続人の子が廃除又は相続欠格の規定により相続権を失った場合は、代襲相続され、被相続人の子の子が相続人となります(民法887条)。
20才の若い女性が配偶者だと名乗り出てきましたが、裁判の結果、婚姻届が資産家老人の死後であることが判明します。
その後、その若い女性に遺産の全てを遺贈するとの資産家老人の遺言書が発見されました。
1. 遺贈の場合は相続税がかからないのでしょうか?
孫やひ孫(直系卑属)がいなければ、100億円の遺産はその若い女性が独り占めできることとなりますが、相続でなく遺言で(遺贈で)100億の財産を得たのですから、莫大な相続税を支払わなくてもよい、ウハウハでしょうか?
ちなみに、相続税の税率は、課税価格(相続人1人のときの基礎控除額は3,600万円です) 6億円超の分は55%です。
いいえ、課税されます。
相続の場合だけでなく、遺贈で財産を取得した個人(日本に住所のある者及び日本に住所がなくても日本にある財産を相続又は遺贈により取得した者等)は、相続税の納税義務があります(相続税法1条の3)。
2. 受託(委任・準委任)契約書を作成しないと報酬を受けられないのでしょうか?
[契約の成立]
今般の民法大改正のひとつで、契約は、申込みに対して承諾をすれば成立し、書面の作成を要しないと明記されました(新民法522条)が、これらは従来の解釈が条文に明記されたもので、従来と変わりません。
民法の規定では、委任は特約がなければ報酬を請求することができません(民法648条1項)。
商法512条では当然に報酬を請求することができます。
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができます(商法512条)。
商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいいます。
宅地建物取引業者は、民事仲立人ですから(媒介又は代理の場合)、商法502条11号の仲立ちに関する行為を営業とする者で、商人です(判例)。
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